札幌市のパーソナルトレーニングジム スタイルメソッドの古本 直也(フルモト ナオヤ)です。
「腹筋は他の種目でも使われるから鍛える必要はない」といったセリフを聞いたことはあるでしょうか?
このセリフには「スクワットやデッドリフトなどの構造的エクササイズを行うと、フォームを維持する際に腹筋も強く刺激されるので、プランクやシットアップなどのエクササイズを取り入れなくても、お腹周りの筋肉をつけることができるよ」という意味が込められています。
当ジムには、以前違うパーソナルトレーニングジムに通われていた経験のあるお客様が多く在籍しているのですが、その当時のパーソナルトレーナーにこれと同様のセリフを言われた、という方は何名もいらっしゃいます。
今回は、腹筋を鍛えるエクササイズを取り入れるべきか否か?というテーマで記事を書いていきますが、最初に結論からお伝えしますと、お腹周りの筋肉を極力つけたくない!という方以外は、基本的に取り入れるべきだと考えています。
「腹筋は他の種目でも使われるから鍛える必要はない」と言われている理由
先ほど「構造的エクササイズ」と記載しましたが、これは「背骨に対して長軸方向に負荷のかかるエクササイズ」を指します。
適切な表現ではないかもしれませんが、スクワットやデッドリフトなど「背骨をギュッと押し潰す=圧縮するようなエクササイズ」だと思っていただければ大きな問題はありません。
そのため、構造的エクササイズを行う際は、腰が丸まったり過剰に反ったり、つまり脊柱本来のS字カーブから逸脱したフォームになると、腰痛や椎間板ヘルニアなどを発症させるリスクが高まると判断できます。
では、どうすれば脊柱本来のS字カーブを保ったまま構造的エクササイズを行うことができるのかというと、ここで登場するのが腹筋です。
腹筋にググッと力を入れることで、お腹に生じる圧力=腹圧が上昇し、たとえ高重量であったとしても、脊柱本来のS字カーブを保ったまま構造的エクササイズを行うことが可能になります。
※腹圧の上昇には、骨盤底筋群・多裂筋など腹筋以外の筋肉、そのほか呼吸相も関与しているのですが、本記事とはあまり関係がありませんので深く触ることはしません。
まとめると、
・構造的エクササイズを行う際は、怪我をしないために脊柱本来のS字カーブを保つ必要がある
・脊柱本来のS字カーブを保つためには、腹圧を上昇させる必要がある
・腹圧を上昇させるためには、腹筋に力を入れる必要がある
・腹筋に力を入れることで、お腹周りの筋肉が鍛えられる
このような理由から「腹筋は他の種目でも使われるから鍛える必要はない」と言われたりします。
スクワットと腹筋系エクササイズにおけるEMG値
先ほど「腹筋は他の種目でも使われるから鍛える必要はない」と言われている理由をお伝えしました。
が、本当にお腹周りの筋肉を鍛えられるくらい、腹筋は強く刺激されるのでしょうか?
20代の男性アスリートを対象に、スクワットを3RMの60%・75%・90%の重量で行ってもらい、いくつかの筋肉におけるEMG値(筋線維が収縮活動をするときに発生する活動電位)を計測した研究があります(1)。
重量的には、決して軽い重さではありません。
結果、プランクやシットアップなどの腹筋系エクササイズの方が、腹筋のEMG値は有意に高いことが分かりました。
言い換えるのであれば、簡易で強度の低い腹筋系エクササイズの方が、スクワットよりも腹筋が強く刺激されるということです。
「構造的エクササイズで腹筋を鍛えることは絶対にできない」とは言いません。
しかし、EMG値を見る限りでは「腹筋は他の種目でも使われるから鍛える必要はない」とはとても言えなさそうな気がします。
最後に
ダイエット・ボディメイクにおいては、見た目的も姿勢的にも腹筋が重要になります。
厳密には、腹筋だけでなく全身の様々な筋肉を満遍なく鍛えることが重要になります。
お腹周りの筋肉を極力つけたくない!という方以外は、やはり腹筋を鍛えるエクササイズを取り入れた方が良いと思う今日この頃です。
<参考文献>
(1)Electromyographic comparison of the back squat and overhead squat