札幌市のダイエット・ボディメイク専門パーソナルトレーニングジム「スタイルメソッド」の古本 直也(フルモト ナオヤ)です。
腕立て伏せは、ベンチプレス同様、大胸筋や上腕三頭筋といった上半身の筋肉を鍛えることができるエクササイズとして知られています。
コロナ禍で、自宅でのトレーニングを余儀なくされた方の多くは、実際に取り入れられていたのではないでしょうか?
今日は、腕立て伏せを行う際、厳密には肘を伸ばした際、肩甲骨を寄せるべきか否かについて私の見解をお話します。
結論
結論からお伝えしますと、腕立て伏せを行う際は、肘を伸ばしたスタートポジション(フィニッシュポジションでもあります)では肩甲骨を離し、肘を曲げた切り返し局面では肩甲骨を寄せてもらうよう指導しています。
腕立て伏せと似た関節運動を伴うベンチプレスでは、肘を伸ばしたスタートポジションでも、肘を曲げた切り返し局面でもずっと肩甲骨を寄せることが推奨されていますが、そのような指導はしません。
では、なぜこのような指導をしているのかというと、そうすることによって、腕立て伏せのメリットを享受できると考えているからです。
ここからは、腕立て伏せのメリットをわかりやすくお伝えするため、ベンチプレスと対比させ話を進めていきます。
ベンチ台と肩甲骨
まず、ベンチプレスでは、動作中ずっと肩甲骨を寄せることが推奨されているわけですが、その主な理由は「肩の保護」にあります。
肘を伸ばしたスタートポジションで肩甲骨を離してしまうと、肘を曲げた切り返し局面で肩甲骨を寄せることが困難になり、そのとき三角筋が過度に伸長されたりして、結果肩を痛める、という流れです。
では、なぜ「肘を伸ばしたスタートポジションで肩甲骨を離してしまうと、肘を曲げた切り返し局面で肩甲骨を寄せることが困難になる」のかというと、これはベンチ台に関係があります。
ベンチプレスでは、ベンチ台に肩甲骨を押し当てて動作を行うため、どうしても摩擦が生じるわけです。
しかし、腕立て伏せでは、ベンチプレスのようにベンチ台を使用しないため、肩甲骨を動かす際、特にこれといった摩擦は生じません。
肘を伸ばしたスタートポジションで肩甲骨を離したとしても、肘を曲げた切り返し局面で肩甲骨を寄せることは容易です。
前鋸筋への刺激
先ほど「腕立て伏せでは、肘を伸ばしたスタートポジションで肩甲骨を離したとしても、肘を曲げた切り返し局面で肩甲骨を寄せることは容易です」と記載しましたが、このように肩甲骨を動かすことでどのようなメリットがあるのかというと、前鋸筋に刺激を加えることが可能となります。
前鋸筋は、胸郭外側面(大まかには胸と脇腹の間)に位置しており、肩甲骨を前外方向に押し出す=肩甲骨を離す作用を持つ筋肉です。
ベンチプレスをはじめ、スクワットやデッドリフトなど一般的なエクササイズでは、基本的に肩甲骨を寄せるよう指導されます。
そのため、先述した一般的なエクササイズでは、肩甲骨を寄せる作用を持つ筋肉(僧帽筋中部や菱形筋など)は強化されますが、前鋸筋が強化されることはありません。
もっとも、ベンチプレスにおいては、肘を伸ばすとき肩甲骨を離すことで、前鋸筋に刺激を加えることは可能です。
しかし、そうすると今度は、肘を曲げるときベンチ台による摩擦の関係で、肩甲骨を寄せることが困難になり、肩を痛めるリスクが高まります。
つまり、結局のところ何を言いたいのかというと、腕立て伏せはベンチプレスとは違い、しっかり肩を保護しながらも前鋸筋を鍛えることができるということです。
最後に
このような理由から、腕立て伏せを行う際は、肘を伸ばしたスタートポジションでは肩甲骨を離し、肘を曲げた切り返し局面では肩甲骨を寄せてもらうよう指導しています。
ただ、最後に1つだけ注意していただきたいのですが、今回の記事はあくまでも「個人」の意見であり、この主張以外はダメ、と言っているわけでは決してありません。
例えば「ベンチプレスのフォームをできるだけ早く習得したいから、腕立て伏せでもずっと肩甲骨を寄せておいて癖を身につけよう」みたいな理由があれば、そちらでも全くもって構わないと思っています。