札幌市のパーソナルトレーニングジム スタイルメソッドの古本 直也(フルモト ナオヤ)です。
近年、フィットネス人口は増加の一途を辿っており、それに伴って、ここ札幌市でもパーソナルトレーニングジムが多くみられるようになってきました。
より質の高いサービスを提供するため、他店はどのようなエクササイズを指導しているのか?どのような料金形態なのか?などを、ホームページをはじめとした情報媒体から、良きライバル店としての目線で日々チェックするようにしています。
パーソナルトレーニングジムには特色があるため、エクササイズ内容や料金プランはジムごとで当然異なるのですが「FMS」を取り入れている店舗が多いような印象を受けました。
パッと調べた限りでも、10店舗はありそうです。
しかし、当ジムではFMSを取り入れていません(以前は取り入れていました)。
今日は、なぜパーソナルトレーニングでFMSを取り入れていないのかについて、その理由を説明をしたいと思います。
FMSとは?
FMSとは「functional movement screen(ファンクショナル ムーブメント スクリーン)」を略したもので、身体が機能的に動くかどうかを検査する、いわば「体力テスト」だと思っていただければ問題ありません。
学校や運動施設で、握力・上体起こし・立ち幅跳び・長座体前屈・ソフトボール投げなどの測定に参加した経験が皆様にもあるかと思いますが、まさにあんな感じです。
FMSは、全部で7種類のテスト項目から構成されており、0〜3点の採点制度が設けられています。
そのテスト項目で定められている動作をうまく行えた場合は3点、うまく行えなかった場合は2→1→0点と下がっていく仕組みです。
FMSの実施風景を録画した動画を貼り付けておきますので、興味のある方はぜひご覧ください。
FMSのメリット
先述した通り、FMSは7種類のテスト項目から構成されており、4段階の採点制度が設けられているため、ゲーム感覚で身体の状態や特徴を把握することができます。
身体の状態や特徴を把握することができれば、トレーナー側としては指導に役立てたり、クライアント側としては身体を動かす楽しさや重要性を再認識したり、その後のスポーツに応用したり、トレーニングのモチベーションを高めることにも繋がるでしょう。
FMSのデメリット
先ほど、FMSのメリットを紹介しましたが、ここまでの話だと、FMSを取り入れた方が良いように聞こえるかもしれません。
しかし、実はFMSには、見過ごすことのできない大きなデメリットが3つ存在します。
①指導の時間が短くなる
実際に体験した方はお分かりになるかと思うのですが、FMSの実施には結構時間がかかります。
採点の結果報告や、その結果をどのように受け止めどのように生かしていくのか?などのフィードバックも含めると、最低でも30分は必要です。
30分を長いとするか短いとするかは人それぞれでしょうが、個人的にはちょっと長すぎる気がします。
基本的に、パーソナルトレーニングは時間制です。
トレーナーはクライアントに対し、限られた時間の中で、できるだけ効果的なサービスを提供する義務を負います。
また、FMSをはじめとした体力テストは、定期的に複数回実施することで意義を増します。
「1回やって、はい終わり」ではありません。
FMSを取り入れると、必然的にその分指導の時間が短くなる。
あまり良いことではない気がするのです。
②知り得る情報に特別性がない
FMSには、仰向けに寝転んだ状態で脚を持ち上げていく「アクティブ・ストレートレッグレイズ」という名称のテスト項目があります。
このテスト項目では、太もも裏の筋肉、ハムストリングスの柔軟性を調べることができるのですが、何もハムストリングスの柔軟性は、アクティブ・ストレートレッグレイズ以外でも評価可能です。
当ジムでは、ウォームアップとしてレッグスイングを、エクササイズとしてルーマニアンデッドリフトを指導することが多いのですが、それらを実施すれば、ハムストリングスの柔軟性はわかります。
何を言いたいのかというと、FMSで知り得る情報は、ウォームアップやトレーニングでも十分に知り得てしまうのです。
知り得る情報に特別性がないのです。
とすると、時間を割いてまでFMSを取り入れる価値はあるでしょうか?
ちなみに、ここではわかりやすい例としてアクティブ・ストレートレッグレイズを挙げましたが、ほかいくつかのテスト項目においても、この内容は当てはまります。
③身体能力の向上を実感しづらい
FMSでは、身体が機能的に動くかどうか、具体的には動作の巧みさ・安定性などの身体能力を調べることができるとされているのですが、7種類のテスト項目を見る限り、一番比重が大きいのは柔軟性(≒関節可動域)です。
FMSは「身体能力の中でも、主に柔軟性を評価する体力テスト」と言っても過言ではないでしょう。
そのため、女性においては、ほぼ全てのテスト項目で、多くの方が初回の時点で満点を取ります。
女性においては、全体的にそこまで難しい体力テストではないのです。
よって「前回は1点だったけど、今回は2点に上がった〜!」のように、身体能力の向上を実感しづらい場合が多くあります。
一方で、FMSには腕立て伏せ、厳密には「トランクスタビリティプッシュアップ」という名称のテスト項目もあるのですが、これに関しては難度がかなり高くなっています。
特殊なターゲット層を狙っていない限り、パーソナルトレーニングを受講される方の多くは、運動経験のない女性がメインです。
「1回も腕立て伏せができない」なんてことも珍しくありません。
そのため、今度は逆に難度が高いとの理由から「前回は1点だったけど、今回は2点に上がった〜!」のように、身体能力の向上を実感しづらい場合が多くあります。
それなら、FMSに拘らず、アクティブ・ストレートレッグレイズなど柔軟性を調べるテスト項目では、採点基準を設けずcm制にしたり、トランクスタビリティプッシュアップのような筋力を調べるテスト項目では、いっそのことベンチプレスに変え、挙上重量の増加をセッションごとにkgで伝えた方が良い気がします。
まとめ
・指導の時間が短くなる
・知り得る情報に特別性がない
・身体能力の向上を実感しづらい
最後に
今日は「パーソナルトレーニングでFMSを取り入れていない理由」と題し記事を書いてきましたが、2つ注意していただきたいことがあります。
1つ目は、何もFMSそのものを全否定しているわけではないということです。
また、FMSを取り入れているパーソナルトレーニングジムやトレーナーを批判しているわけでも全くありません。
「メリットとデメリットを吟味した結果、デメリットの方が大きく感じた。だから、当ジムではFMSを取り入れていない」というだけです。
2つ目は、今現在FMSを取り入れてはいないものの、周囲径や体脂肪率などの測定は行っています。
しかし、それらの測定は簡易なもので、お話を含めても15分あれば完了するものとなっています。