札幌市のパーソナルトレーニングジム スタイルメソッドの古本 直也(フルモト ナオヤ)です。

一般的に、ダイエットをする場合は、比較的ゆったりとしたスローペース(1ヶ月あたり3kg前後が平均)で、体重を落とすことが推奨されています。

一方、1ヶ月で5kgも10kgも体重を落とすようなハイペースは、様々な悪影響が出るとの理由から、推奨されることはほぼありません。

しかし、ハイペースでのダイエットは、本当に悪影響が出るのでしょうか?

今日は、体重を落とすペースの違いが、体脂肪量や筋肉量などの体組成・メンタル・リバウンドに、どのような影響を及ぼすのかについてご紹介していきたいと思います。

当ジムの方針

まずは、当ジムの方針からお伝えしますが、当ジムではハイペースのダイエット、つまり「過度な食事制限による急激な体重減少」を指導することはありません。

では、なぜそのような指導をしていないのかというと、理由はいくつかあるのですが、その中でも最も大きなものとしては、体組成への悪影響が挙げられます。

アスリートの方を対象に、フリーウエイトエクササイズを実施してもらい、体重を落とすペースの違いが、体組成にどのような影響を及ぼすのかが調べられました(1)。

つまり、食事制限がゆるい=スローペースで体重を落とすグループと、食事制限がきつい=ハイペースで体重を落とすグループに分け、体脂肪量や筋肉量の変化を調査したわけです。

研究期間は、スローペースが8.5週、ハイペースが5.3週で、どちらのグループも体重の落ちは同等となっています。

その結果、スローペースでは体脂肪量が4.9kg減少したのに対し、ハイペースでは3.2kgしか減少しませんでした。

なお、筋肉量(厳密には除脂肪量)は、スローペースで1.0kg増加したのに対し、ハイペースでは–0.3kgと有意な変化は確認されていません。

つまり、スローペースとハイペースでは、体重の落ちが同等だったとしても、その内訳は異なるということです。

スローペースでは体脂肪量の減少と筋肉量の増加を両立させることができていますが、ハイペースではできていません。

一般的に、ダイエットをする場合は、かっこいい身体&美しい身体になることを目的としている印象があります。

とするのであれば「体脂肪は落とし、でも筋肉は増やし」を狙った方が=スローペースでのダイエットに取り組んだ方が良いような気がします。

また、肥満体型の方を対象に、体重を落とすペースの違いが、体組成にどのような影響を及ぼすのかも調べられています(2)。

ちなみに、この研究では、特にこれといったトレーニングは実施されていません。

食事制限だけです。

研究期間は、スローペースが15週、ハイペースが5週で、どちらのグループも体重の落ちは同等となっています。

その結果、体脂肪量はスローペースで−4.5kg、ハイペースで−2.9kg、筋肉量はスローペースで−0.5kg、ハイペースで–1.5kgとのデータが得られました。

ここでも、スローペースとハイペースでは、体重の落ちが同等だったとしても、その内訳は異なっていることが確認できます。

スローペースでは筋肉をほぼ落とさず体脂肪を落とすことができていますが、ハイペースではそうはなっていません。

体脂肪も落ちてはいますが、筋肉もかなり落ちているのが見て取れます。

このような理由から、当ジムではハイペースのダイエットを指導していないのです。

イライラと体調不良

先ほど、体組成に悪影響を及ぼすとの理由から、当ジムではハイペースのダイエットを指導していないとお伝えしましたが、このような話をすると「確かにハイペースのダイエットは、体組成に悪影響を及ぼすかもしれない。でも、それは同等の体重を落とした場合の話でしょ?同じだけ体重を落とすなら、当然スローペースの方が、その分の期間が長く掛かるわけだ。とすると、同じ期間に焦点を当てれば、ハイペースの方が良い気がする。例えば、とりあえずは食事制限をガッツリして、場合によっては、最近流行りのプチ断食なんかを取り入れたりして、まずは一気に体重を落とす。ある程度体重が落ちたら、今度は食事量をちょっと増やしたりして、うまいことカロリーを調整する。もちろん、トレーニングもガッツリすると。そうすれば、2〜3ヶ月後、同じ期間で見たときは、スローペースよりも、むしろハイペースの方が体組成に良い影響が出るかもしれなくない?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

確かにその通りかもしれません。

しかし、それでも、当ジムではハイペースのダイエットを指導することはありません。

では、なぜそのような指導をしていないのかというと、イライラと体調不良が理由として挙げられます。

おそらく、ダイエット経験のある方ならお分かりいただけると思うのですが、過度な食事制限はイライラを誘発します。

実際、アマチュアウエイトリフティング選手を対象に、48時間のファスティング(いわゆるプチ断食)が、気分にどのような影響を及ぼすのかが調べられているのですが、イライラが増加するとの報告があるほどです(3)。

日常でイライラするのは、あまり良いことではないでしょう。

特にお仕事をされている方は、ミスが多くなってしまうことも考えられますし、本当なら怒る必要のないところで怒ってしまって、場の空気を悪くしたりするかもしれません。

また、これは指導経験が元になっているのですが、過度な食事制限は、状況にもよりますが、体調不良の原因になるとも考えています。

食物から摂取していた水分がなくなるor少なくなることで、脱水気味になったり、ビタミン・ミネラルなど微量栄養素の摂取がなくなるor少なくなることで、貧血気味になったり、という具合です。

私は、今現在パーソナルトレーナーとして活動していますが、何よりもお客様の「安全」を重要視し指導に当たっています。

このような理由もあり、やはり、当ジムではハイペースのダイエットを指導していないのです。

最後に

「当ジムではハイペースのダイエットを指導することはありません」と、しつこいくらい繰り返してきましたが、これはあくまでも「オススメしていない」というだけであり、何も「絶対にしてはいけません」と言っているわけでは全くありません。

体脂肪だけではなく筋肉も落としたかったり、過度な食事制限をしても別段イライラしなかったり、水分は飲料水から、ビタミン・ミネラルなど微量栄養素はサプリメントからしっかり摂取する、という具合に、栄養にも最善の注意を払うのであれば、ハイペースのダイエットも、人によってはアリだなとは感じています。

特にプチ断食においては、デトックス(解毒)効果には疑問がありますが、免疫系にはもしかしたら有益かもしれません。

また、巷では「ハイペースのダイエットはリバウンドする。やらない方が良い」とも言われていますが、長期の追跡調査を見る限り、ペースの違いがリバウンドに影響することはどうもなさそうです(4)。

つまり、スローペースでもハイペースでも、リバウンドのしやすさは同じと言えます。

まとめると、ダイエットをする場合は、基本的にはスローペースで取り組むことを心がけ、スローペースにデメリットを、そして、ハイペースに大きなメリットを感じられるようであれば、状況によっては、ハイペースに取り組んでも良いのではないでしょうか。

 

<参考文献>

(1)Effect of Two Different Weight-Loss Rates on Body Composition and Strength and Power-Related Performance in Elite Athletes

(2)Rapid Weight Loss vs. Slow Weight Loss: Which is More Effective on Body Composition and Metabolic Risk Factors?

(3)Effect of 48 h Fasting on Autonomic Function, Brain Activity, Cognition, and Mood in Amateur Weight Lifters

(4)The effect of rate of weight loss on long-term weight regain in adults with overweight and obesity