札幌市のパーソナルトレーニングジム スタイルメソッドの古本 直也(フルモト ナオヤ)です。

食事制限や運動など、体脂肪を落とす方法はいくつかありますが、その中でもよく話題になるものに「有酸素運動VS筋トレ」があります。

「有酸素運動の方が体脂肪が落ちるよ!」という指導者もいれば「筋トレの方が体脂肪が落ちるよ!」という指導者もいて、どっちを信じれば良いのか、わからなくなってしまった方は多いのではないでしょうか?

今日は、有酸素運動と筋トレの体脂肪減少効果について解説していきたいと思います。

アンダーカロリー

まず、大前提として、体脂肪を落とすためには、日々のカロリー収支をマイナスにする必要があります。

つまり、摂取エネルギーと消費エネルギーを比べたとき「摂取エネルギー<消費エネルギー」という力関係にする必要があるわけです。

この状況は「アンダーカロリー」や「カロリー欠損」と呼ばれており、体脂肪を落とす条件として確認されています(1)。

そして、限度はあるでしょうが論理的には、アンダーカロリー量が大きいほど、体脂肪を落とすスピードが早くなると考察可能です。

先述した通り、アンダーカロリーは、摂取エネルギーよりも消費エネルギーが多い状態を指しますので、摂取エネルギーを減らす、または消費エネルギーを増やすかすれば、アンダーカロリーを作り出すことができます。

体脂肪を落とす際には、食事制限や運動が推奨されますが、その理由がこれです。

食事制限は摂取エネルギーを減らすことに繋がり、運動は消費エネルギーを増やすことに繋がります。

そのため、結局のところ、アンダーカロリーが守られているのであれば、食事制限でも運動でも、どちらでも体脂肪は落ちます。

時々「食事制限は一切しないで運動だけで痩せた」という方や「運動は一切しないで食事制限だけで痩せた」という方がいますが、彼らは手段が違っただけで「アンダーカロリーを守った」という点は同じなのです。

本題に入る前に

アンダーカロリーを確認できたところで、これから本題に入っていきたいと思うのですが、有酸素運動と筋トレの体脂肪減少効果について話をする際は、摂取エネルギーも考慮しなくてはいけません。

いくら、長時間・高強度・長期間の有酸素運動を行ったとしても、消費したエネルギー分以上の食事を摂り、アンダーカロリーでなくなれば当然体脂肪は落ちませんし、短時間・低強度・短期間の筋トレしか行ってなかったとしても、食事に十分気をつけ、アンダーカロリーを作り出せばみるみる体脂肪は落ちるからです。

そのため、今から有酸素運動と筋トレの体脂肪減少効果について話をするのですが、正確には「摂取エネルギーが同じ(食事制限をしない)場合における、1年未満の、有酸素運動と筋トレの体脂肪減少効果」について触れることをご理解ください。

有酸素運動VS筋トレ

先述した通り、体脂肪を落とすためにはアンダーカロリーが条件になり、限度はあるでしょうが論理的には、アンダーカロリー量が大きいほど、体脂肪を落とすスピードが早くなると考察可能ですので、有酸素運動と筋トレの消費エネルギーを調べれば、どちらの方が体脂肪減少効果が高いのかがわかるはずです。

推測

まずは、有酸素運動の消費エネルギーですが、これは運動様式によって変わってきます。

ランニングなのか、サイクリングなのか、水泳なのか、それともエアロビクスなのかで。

ここでは、ごく一般的な有酸素運動である、ゆっくりめのランニング(6km/h)を例に取りましょう。

ランニングの消費エネルギーは、身体活動強度を表す単位「METs」で求めることが可能です(2)。

それによると「体重×走行距離」がおおよそになるため、体重70kgの方が、1時間、6km/hのランニングをしたとすると「70kg×6km」が計算式になり「420kcal」前後を消費すると考えられます。

次は、筋トレの消費エネルギーですが、これに関してはいくつか研究が行われており(3)(4)、トレーニング初心者では、ごく一般的なマシントレーニングで、1時間あたり「体重×3」ほど消費すると予想されます。

もしかしたら、もうちょっと少ないかもしれません。

仮に、運動経験の乏しい体重70kgの方が、1時間トレーニングマシンで筋トレをしたとすると「70kg×3」が計算式になり「210kcal」前後を消費するはずです。

6km/hのランニング(有酸素運動)は420kcal、トレーニング初心者のマシントレーニング(筋トレ)は210kcalの消費と導き出すことができました。

差は210kcal、倍です。

そのため、体脂肪減少効果は有酸素運動の方が高いと推測できます。

もっとも、このような話をすると「いやいや、筋トレをすると筋肉がつくから、安静時代謝(≒基礎代謝)が増えるでしょ?筋トレの消費エネルギーは、トータルで考えるともっと多くなるよ」と思われる方もいるでしょう。

確かに、筋肉は安静時代謝を構成する要素ですので、筋トレをして筋肉を増やせば、それに伴って安静時代謝も増加し、さらには消費エネルギーの増加にも繋がります。

しかし、筋トレによる安静時代謝の増加量は、思っている以上に微々たるものかもしれません。

過去1年間筋トレをしていない18〜35歳の男女を対象に、スクワットやベンチプレスなどのフリーウエイトエクササイズを週3日、計96回(9カ月間)実施したところ、個人間で広いばらつきはあるものの、安静時代謝は以下のように変化しました(5)。

筋トレ前:1653±302kcal/日
筋トレ後:1726±291kcal/日
変化量:+73kcal/日

1月あたりに換算すると、安静時代謝の増加量は「8kcal」になります。

結構な長期間で見ると、決して無視できない数値ではありますが、少なくとも1年未満の期間では、安静時代謝の増加量を考慮しても、筋トレが有酸素運動の消費エネルギーを超すとは考えにくいため、やはり「体脂肪減少効果は有酸素運動の方が高い」との推測は変わりません。

科学的知見

「体脂肪減少効果は有酸素運動の方が高い」と先述しましたが、これはあくまでも推測に過ぎません。

実際のところ、どうなのでしょうか?

平均年齢50歳前後の幅広い年代の男女を対象に、彼らを有酸素運動グループと、筋トレグループに分け、8ヶ月間エクササイズを実施してもらい、体組成がどのように変化するのかを調べた研究があります(6)。

なお、詳細は以下の通りです。

・有酸素グループ:ランニングマシン・エリプティカル・エアロバイクを使用。運動時間は週あたり約130分。週あたり約20kmのランニングに相当する消費エネルギー。
・筋トレグループ:8種類のトレーニングマシンを使用。週3日・8〜12回・3セット。運動時間は週あたり180分。
・摂取エネルギー:両グループとも研究前後で差はなし。

その結果、

・体重:有酸素運動で1.76kg減少、筋トレで0.83kg増加。
・体脂肪量:有酸素運動で1.66kg減少、筋トレでは0.26kg減少しているが有意な変化ではない。
・ウエスト周囲:有酸素運動で1.01cm²減少、筋トレでは変化なし。
・筋肉量:有酸素運動では変化なし、筋トレで1.09kg増加。

とのデータが得られました。

推測通りです。

最後に〜状況に応じて使い分けを〜

体脂肪減少効果は有酸素運動の方が高いと言えそうですが、これはあくまでも「摂取エネルギーが同じ(食事制限をしない)」や「1年未満」という条件下の話に過ぎません。

できるだけ早く体脂肪を落としたい・筋肉は一切増やしたくない・食事制限は一切したくない・有酸素運動が好き、という方に関しては、食事制限をせず、ランニングをはじめとした有酸素運動に励むのがベターでしょう。

それなりの期間はかかるでしょうが、筋肉を一切増やさず、体脂肪を落とすことができるはずです。

一方、ゆっくりで良いので体脂肪を落としたい・筋肉を増やしたい・食事制限をしても良い・筋トレに興味がある、という方に関しては、軽めの食事制限と筋トレを組み合わせることをオススメします。

そうすれば、体脂肪を落としながらも、筋肉を増やすことができるでしょう。

つまり、何を言いたいのかというと、状況に応じた使い分けが重要ということです。

 

<参考文献>

(1)International society of sports nutrition position stand: diets and body composition

(2)健康づくりのための運動指針 2006

(3)Energy Cost of the ACSM Single-Set Resistance Training Protocol

(4)Effects of Load-Volume on EPOC After Acute Bouts of Resistance Training in Resistance-Trained Men

(5)Effect of Resistance Training on Resting Metabolic Rate and Its Estimation by a Dual-Energy X-ray Absorptiometry Metabolic Map

(6)Effects of aerobic and/or resistance training on body mass and fat mass in overweight or obese adults