札幌市のパーソナルトレーニングジム スタイルメソッドの古本 直也(フルモト ナオヤ)です。
一般的に、筋トレを行う際には、1部位につき複数の種目を実施する(バリエーションを取り入れる)ことが推奨されています。
脚を例に出すと、まずはスクワットから始め、次にランジを行い、最後はレッグエクステンションで締める、という具合です。
今日は、このバリエーションに着目し、メリットとデメリットを紹介していきたいと思います。
バリエーションを取り入れるメリット
まず、私自身の見解をお伝えしますと、バリエーションを取り入れることに対しては肯定的な立場にいます。
脚だけではなく、胸にしろ、肩にしろ、背中にしろ、1部位につき複数の種目を実施するに越したことはないと考えています。
なぜこのような主張をするのかというと、その理由は2つあります。
1つ目が「トレーニング効果の向上」2つ目が「モチベーションの上昇」です。
研究デザインが少し複雑なため、ちょっと大雑把になりますが、平均年齢が25歳前後の男性を集め、スクワット・レッグプレス・デッドリフト・ランジなど複数の種目を実施するグループと、スクワットだけを実施するグループに分け、脚周りの筋肉がどのように変化するのかを調べた研究があります(1)。
つまり、バリエーションを取り入れるグループと、取り入れないグループに分けたわけです。
その結果、バリエーションを取り入れたグループでは、脚周りの様々な部位で筋肉量が増加することが確認されました。
また、似たような研究では、バリエーションを取り入れたとしても、取り入れなかったとしても、筋肉量の増加に差は確認されなかったのですが、モチベーションに関しては、バリエーションを取り入れたグループでのみ上昇したとの報告があります(2)。
簡潔にまとめると、もちろんやり方によっても変わってはくるでしょうが、バリエーションを取り入れることによって、トレーニング効果が向上したり、モチベーションが上昇したりする可能性があるということです。
トレーニング効果の向上や、モチベーションの上昇は、トレーニーにとって非常に良いことでしょう。
早い段階で目に見えた変化が現れるでしょうし、継続率アップにも繋がると考察できます。
バリエーションを取り入れるデメリット
先述した通り、個人的には、バリエーションを取り入れることに対して肯定的な立場にいますが、だからと言って取り入れすぎるのには賛成できません。
なぜこのような主張をするのかというと、その理由は2つあります。
1つ目が「調子の把握が困難になる」2つ目が「フォームの習得が遅くなる」です。
比較的長期間、筋トレを継続している方ならお分かりになると思うのですが、例え同じ種目であったとしても、その日の調子(体調)によって「重たさの感じ」は異なる場合があります。
「この前はスクワット100kgが軽く感じたけど、今日はやたらと重く感じるな」という具合です。
人間、生きていれば色んな出来事がありますので、日によって調子が変わるのは、至極自然なことでしょう。
しかし、調子を把握しておくことは、筋トレを行ううえで非常に重要です。
「この前はスクワット100kgが軽く感じたけど、今日はやたらと重く感じるな。そういえば、昨日の夜かなりこってりしたラーメンを食べたな。もしかしたら、それが原因かもしれない。筋トレ前日は、こってりしたものを控えるようにしてみるか」であったり「この前はスクワット100kgが重く感じたけど、今日はやたらと軽く感じるな。そういえば、午前中ヨガの体験に行ったんだ。もしかしたら、それが影響しているかもしれない。これからは少し早起きして、ヨガを取り入れてみるか」このように、調子を把握しておけば、筋トレの質を高めることに繋がるかもしれないのです。
そして、基本的にこの調子は「同じ種目」を実施することで把握できます。
言い換えるのであれば「比較する対象が同じ」であるがゆえ、より正確に調子を把握することができるということです。
そのため、前回はスクワットを、今回はレッグプレスを、次回はデッドリフトを、そのまた次回はランジを…というように、バリエーションを取り入れすぎてしまうと、比較する対象(種目)が異なるため、調子の把握が困難になると予想されます。
また、これは特に初心者における話なのですが、基本的に筋トレを始めて間もないうちは、フォームの習得に専念してもらう必要があります。
不適切なフォームでは、トレーニング効果が落ちるばかりか、怪我のリスクも高まるためです。
適切なフォームを習得できてから、負荷をかける=筋肉にしっかりと刺激を入れる流れが一般的です。
しかし、フォームの習得には、思っている以上に長い期間がかかります。
トレーニングマシンを利用した単関節運動などでは、極端な話その日のうちにフォームを習得できますが、ダンベルやバーベルを利用したフリーウエイトの多関節運動などでは、フォームを習得できるまで、1〜2ヶ月の期間を要することもザラです。
つまり、何を言いたいのかというと、初心者のうちにバリエーションを取り入れすぎてしまうと、全ての種目におけるフォームの習得が遅くなり、負荷をかけるまでの期間が長くなってしまったり、一方その状況で強い負荷をかけると、トレーニング効果が目に見えないばかりか、大きな怪我に繋がることが予想されるということです。
バリエーションの取り入れ方
このように、バリエーションには、取り入れるメリットもデメリットも存在するわけですが、結局のところ、どのように取り入れれば良いのかというと、以下の流れをオススメしています。
①特に初心者のうちは、スクワットやデッドリフトをはじめとした、ベーシックな種目のフォーム習得に専念する。
②ベーシックな種目のフォームを習得しつつ、徐々に負荷を上げていく。
③ベーシックな種目のフォームをある程度習得できたら、ベーシックな種目を継続しつつ、状況を見て他の種目にも取り組む。
④ベーシックな種目を継続しつつ、新たに取り入れた他の種目のフォーム習得にも専念し、徐々に負荷を上げていく。
⑤これを繰り返すと、複数の種目のフォームを習得できている状況になる。
⑥ベーシックな種目を「核」とし、様子を見ながらバリエーションを取り入れる。
例)
第一月曜日:スクワット・ランジ
第一木曜日:スクワット・レッグプレス
第二月曜日:スクワット・レッグエクステンション
第二木曜日:スクワット・ランジ
以下つづく
最後に
先ほど、バリエーションを取り入れる際の流れを紹介しましたが、あれはあくまでも一例に過ぎません。
別に良い方法があるのであれば、そちらを採用するべきです。
ただ、繰り返しになりますが、バリエーションの取り入れすぎにはデメリットがあることは事実ですので、そこだけは注意していただければと思います。
<参考文献>
(1)Changes in Exercises Are More Effective Than in Loading Schemes to Improve Muscle Strength
(2)The effects of exercise variation in muscle thickness, maximal strength and motivation in resistance trained men